「一人の人に向けて/手紙のように書く」はなぜ大事なのか

セールスレターやコピーなど、ライティングを習っている人なら耳にタコができるほど聞いているであろう、「一人の人に向けて/手紙のように書く」という言葉。

なぜ一人の人に向けて書くのか、なぜ手紙のように書く必要があるのか、考えたことはありますか?

習ったときは、「皆さん!」と大勢に呼びかけたほうがいいのではないかと思っていましたが、書けば書くほど、また添削すればするほど「たった一人に対して書く」ことの大切さを痛感するようになりました。

ご自分がスマホやPCでwebで検索して読んでいることを、思い出してみてください。

どんなにまわりに人がいようとも、眼の前の文章を読んでいるのは「自分だけ」なのです。

あなたも、学生時代の朝礼などで、校長先生から遠くの方で「皆さんは〜」とマイクで呼びかけられても、ボーッとしながら話半分で聞いていた記憶があるのではないでしょうか。

それは、自分に話しかけられているのではないという認識だからですよね。

文章は、だだっ広い校庭で校長先生の話を聞いているのではなく、文章と読み手の距離はわずか30cmほど、「1対1」の空間なのです。

それなのに、書いてある文章が「皆さん!」と言っているのでは、読み手は自分に語りかけられているとは思えず、言葉は刺さりません。

 

しかし、名指しで「あなたは」とくれば「あ、オレ?(私?)」となるでしょう。

「あなたはこんな間違いを犯していませんか?」と問われれば、否応なく自分の記憶をたぐり始めます。

文章も同じです。「突然ですが、あなたは今どこでこれを読んでいますか?」と聞かれれば、一瞬自分の今いる部屋や電車の車内などの「場所」に意識が向くでしょう。

今まさにあなたが読んでいるこの文章の少し前、校長先生の話のところで「あなたも」と私が呼びかけたのを覚えていますか?

これだって、意図してやったことです。

つまり、文章を書くときは「読み手を想像して」「たった一人に向けて書く」ことがとても重要なのです。

 

また、「手紙をかくように」は、なにも拝啓から始まり時候の挨拶を述べて……などと言っているのではありません。

「たった一人に向けて書く」ことの形が、「手紙」だということです。

手紙を書くときは、読む相手を意識して書きますよね?

「こう書いたらどう思うだろうか」と、相手の反応や感情の流れを想像しながら書きます。

たとえば「お元気ですか?」と書き出す時、社交辞令の便利な言葉だとしても、それで次の話がつなぎやすくなるのは事実です。

文章でも書き始めはいきなりメインから始めず、「導入」という手法を使います。

相手の注意や関心を引いたところで、内容の詳細説明などに入るわけです。

また、ときどき「ですよね?」など問いかけたりすると、読者は筆者と一緒に考えを進めているような感覚になり、臨場感や親しみが湧くという効果があります。

 

これらは、人に読ませるための文章を書く時の基本ですが、意外と忘れがちです。

さらに、意識しようと思っても、書いてみるとなかなか上手にできません。

これはスポーツと同じで、繰り返しの訓練が必要だからです。

何度も繰り返し練習し、クセをつけなければ思い通りに書けないのが文章です。

文章力をつけるなら、たくさん書いてフィードバックをもらい、練習を重ねるのがオススメです。

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