人の価値観は、”常識”という曖昧なもので、なんとなく括られたり流されたりしています。でも、私はものを書く時、「果たしてこれは本当にみんながそう思っていることなのか?」と考える瞬間があります。
ごく一部の人にしか常識として捉えられていないこともあるからです。例えばお雑煮は全国各地で甘かったり醤油ベースだったりと様々ですが、ほとんどの人が地元の味をスタンダードだと思っています。また、「犬」という単語ひとつでも、犬が好きな人もいれば嫌いな人もいるし、飼うことの責任やフン被害など具体的な事柄を思い起こす人もいるでしょう。
ライティングの難しさのひとつに、「価値観の共有」ということがあります。ライティングとは、読む人が欲するものを書くことです。自分の価値観が、果たして読む人全ての常識なのかということを、常に疑う必要があります。一般的な常識や価値観に関しては、読者への思いやりをいかに持てるかが重要です。
しかし、伝えたい価値観の場合には、伝える相手によって異なります。
自分のファンやクライアントに向けて書く場合
自分のブログやメルマガを書く場合のほとんどは、ファンになって欲しい人に向けて、またはすでにファンになっていただいている人に向けて書きます。自分の価値観や世界観を理解してもらう手段としての読み物だからです。
だから、内容としては基本的に「自分が伝えたいこと=自分の価値観」でOKです。
でも、この場合も注意が必要で、独りよがりでぐいぐい押すのでは、読む方も拒否反応を起こしてしてしまいます。
あくまでも、読者がその文章を読んで自分と同じように理解してくれるか、また読んでどんな気持ちになるのかを探りながら、文章を作っていくわけです。
簡単そうで、難しいですよね。
伝えたいことを正確に伝える対策としては、2つあります。ひとつは、抽象的な言葉をできるだけ使わないことです。抽象的な言葉とは「おおきな(ちいさな)・きれいな(汚い)・面白い(つまらない)」などで、抽象的な言葉は人それぞれの尺度が違うからです。
自分の感想としてなら抽象的な言葉もアリですが、何かを説明する場合には、誰が見てもそれ以外想像できないような言葉を使うのがベストです。例えば大きさを言うなら単位や数字で表します。
きれいとか面白いというのは、もうセンスや感覚の問題ですよね。自分のセンスや感覚を知って欲しいために、あえて使うというのはアリかもしれません。
もうひとつは、できるだけ指示語をなくすことです。指示語とは、「これ・あれ・それ・この・あの・その」などです。特に指し示す単語と文章が離れていると、言いたいことがぼやけて意味が正確に伝わりにくくなります。
ライターとして書く場合
ライターとして書く場合は、読者の前に「発注する人」がいます。ライターは、発注者の意図を汲んで、読者に伝えるという役割があります。
もちろん、内容は「発注者の価値観」になります。
だから、まずは発注者と何度も打ち合わせしたり、確認したりという作業があります。発注者の価値観を自分の中に落とし込み、理解してからライティングに取り掛かるためです。
発注者の意図を汲んで書くときも、読者に理解しながらついてきてもらうことが重要です。こちらの言い分ばかり伝えるだけでは、読者が置いてけぼりになってしまうからです。
読者の感情の流れを細かく読みつつ、時々は納得したか確認するような文章などを挟んで進めていきます。
主役はいつも”読者”
物を書くときに価値観を意識することは、けっこう重要です。
ファンやクライアントに向けて書く場合は、以下の2点に注意します。
- 指示語を使わない
- 具体的な単位や数字を使う
ライターとして書く場合には、次のことに留意します。
- 発注者の意図を汲む
- 読者に理解してもらう
いずれの場合も、読者に書いた内容を正確に理解してもらうためには、自分の価値観を常に疑い、確認しつつ共有することが大切です。